Special Exhibition, 2023
MOMENTARY
会期 : 2023年 11月23日 – 12月7日
会場 : 京都 両足院
アートは無邪気に、ときに思いがけない方法で僕を楽しませてくれる。
教科書の偉人の写真に落書きをしたり、ノートの端っこに誰かの似顔絵を描いてみたり、そんな子どものころのままの気持ちで絵を描き続けてきた。教科書やノートは、キャンバスに変わったが、絵を描くときの楽しさは、いまも変わらない。絵を描いているとき、僕の心は時空を超えて自由に飛び回る。そして手は心の動きを追いかけ、絵の具をつかってキャンバスに軌跡を残す。そうやって1枚の絵が完成したとき、なんともいえない幸福を感じる。
そんな僕に、いろんな仲間がいろんなアイデアやチャレンジやチャンスを持ち寄ってくれるようになった。大きな壁やスニーカー、クルマや服、クッキーの缶、クマの形のフィギュア…… いろんなものに絵を描いてみないかと、彼らは声をかけてくれた。大きかったり、小さかったり、曲面だったり、球面だったり。最初は困難に思えたことでも、やってみるとキャンバスに向かっているのと同じように、心も、手も動いてくれた。そうやって描いた絵をアートと呼ばせてもらうなら、アートってやっぱりすごいと思った。その楽しさはどこまでも無限で、もしかしたら僕が思っている以上の可能性を秘めているのかもしれない。
楽しさのその先に、僕はいま向かっているのだと思う。このART LANDは、その未来を、可能性を知るための展覧会だ。そしてこのART LANDを通して、いっしょにアートの旅をしてくれる仲間が少しでも増えてくれたらうれしいし、僕はもっと自由になれる気がする。
会期 : 2023年 1月12日 – 1月24日
会場 : スパイラルガーデン
SHUN SUDOの本個展が開催される時期は、2022年初頭から開始されたロシアによるウクライナ侵攻が継続されている最中にあたる。SUDO自身は、本展との関わりにおいて、 ボブ・ディランの代表曲「風に吹かれて(Blowin’ in the Wind)」(1963)に不思議なシンパシーを感じると述べている。そのディランの「風に吹かれて」は、黒人の権利を求めて闘争した当時のアメリカ公民権運動を支持するために作られたと言われているが、世界一有名な反戦歌のひとつとして知られる。当然ながら、本展におけるSUDOの制作も、そうした混乱を極める時代の状況から不可避的に影響を被っている。彼が感じるシンパシーも、そうした共通点からやってくるものかもしれない。しかし、数ある「反戦歌」のなかでもSUDOがこの曲に特に共感を覚える理由は、その独特のスタンスにあると考えられる。
「答えは風に吹かれている(The answer is browin’ in the wind)」という歌詞に象徴され るように、この曲は反戦という強い意志に裏打ちされていながらも、決して絶対的な「答え」を聴く者に押し付けてこない。SUDOの作品も同様に、政治的批評性に立脚しつつも、一方的なメッセージとして響くことはない。今回の展示でのメイン・ピースには、彼のシグニチャーである「ボタンフラワー」と一緒に「鳩」が描かれている。平和の象徴として頻繁に使用される「花」や「鳩」というモチーフを用いた表現は、かなり直接的なメタファーであると言えるが、それを自分なりにアレンジしたそうした率直な選択からは、むしろ作家の切迫した感情が伝わってくるようにも思われる。加えて、「ボタンフラワー」が収められている「花瓶」をよく見てみると、最前線で戦闘を行う兵士のヘルメットを逆さにしたようなギミックをしていることに気づく。そのほかにも、薬莢やバズーカ など殺戮の道具として製造された様々な兵器が、SUDOの巧みなアレンジとアプロプリエーションを通して本来の「用途」を失い、アートにおける新しいモチーフとして再生している。
一見すると「ポップ・アート」の系譜に位置づけられるようにも感じられるSHUN SUDOの作品群は、しかし、「ポップ・アート」の作品の多くでは明示的に示されていなかった政治性を備えていると言える。そこには、彼の特性とも言える、文化的系譜のなかに現代 的な要素を織り込む技術が活かされている。加えて、SUDOの作品の特徴である力強い輪 郭線の原風景であるマンガや、海外から輸入されたスケートボードのデッキに描かれた個性的なイラストレーションなどのポップ・カルチャーも彼の芸術実践の核を形成してきた。政治的混迷が日に日に度合いを深める世界において、「アートに何ができるのか」という問いがますます重みを増しつつある。本展におけるSHUN SUDOの芸術実践は、その問いにどのように応答しようとしているのか。自身の目で確かめてみてほしい。
会期 : 2022年 7月9日 – 7月24日
会場 : elephant STUDIO
言語化できない。したくない。
だから僕は、絵を描いている。
なぜ絵を描くのか? この絵の背景は?
アートとはなにか?
僕は絵を描きたくて描いているだけなのに、
なぜか言葉を求められる。
理由なんてない。物語も背景もない。
芸術をやっているという意識もない。
メッセージはなんとなくあるような気がするけど、
そのために絵を描いているわけではない。
僕は、描きたい絵を、描きたいときに、
描きたいように描いているだけ。
絵を描いている僕は、僕のようで僕ではなく、
僕ではないような気がするけど、やっぱり僕だ。
その感覚は言語化できないし、しようとも思わない。
ただその瞬間がたまらなく幸福だから、
僕は絵を描いている。描き続けている。
会期 : 2021年 12月11日 – 12月26日
会場 : MU GALLERY
山奥やジャングル、サバンナに行かずとも
僕らのまわりでは、
当たり前のように花が咲き、
虫がいて、鳥が羽ばたいている。
東京という都会で暮らしながら、そんな1つひとつの
生命の力強さ、きらめきに触れるたび、
彼らとともに生きていることをとても心強く、
そして幸せに感じる。
ふと目に飛び込んでくる、なにげなく、
かけがえのない生命の躍動を描きたいと思った。
会期 : 2021年 10月9日 – 10月14日
会場 : 東京エディション虎ノ門
NYで生活するつもりだった。
いつもどおり友人たちとハグしてハイタッチして、
笑いながら過ごすつもりだった。
いつもどおりハッピーな気分で
絵を描き続けるつもりだった。
でも突然国境は閉ざされ、
だれかと過ごすこともできなくなった。
憧れの人は国境のない場所へと旅立った。
だれもが怒り、悲しみ、そのやり場のない感情を
だれかにぶつけようとした。
希望を失いそうになった。
それでも希望にすがらずにはいられなかった。
2020年は特別な1年だと、だれもがいう。
たしかにそのとおりだと思う。
感情が揺すぶられ、思考がとりみだれ、
ときにはその両方がシャットダウンしそうにもなった。
こんな経験はしたことがないし、もう二度としたくない。
でもひとつだけわかっていたことがある。
アートは決して死なないということ。
アートは決してロックダウンしないということ。
だから僕は、僕が見た2020年の“景色”を
描いてみようと思った。
この時代を生きるひとりのアーティストとして、
自分なりに特別な1年に向き合う。
そうすることで僕は、
この2020年を記憶に残そうと思う。
会期 : 2020年 12月10日 – 12月27日
会場 : ANB Tokyo 3F & 6F
California Love, 2020
Acrylic on canvas / 90 × 90 × 3cm
2020年1月、突然この世を去ったBasketball PlayerのKobe Bean Bryant。彼を敬愛するShun Sudoが、心からの弔意と感謝をこめて描いた1枚。2輪の花はKobeと、ともに亡くなった彼の娘。2輪が重なり合うことで、彼の永久欠番“8”の形を表している。茎の部分のShoelacesは、もうひとつの永久欠番“24”、そして“LA”。紫の花の中心は、よく見るとBasketballになっている。
Access All Areas, 2020
40.6 × 30.7 × 5 cm
Passportがあれば、僕らはいつでも地球上を旅することができた。次はどこへ行こう。どんな旅をしよう。どんな出会いがあるだろう……。しかし、ある日突然、僕らは旅をする権利を、自由を奪われた。目に見えない国境に、目に見えないCurtainがかけられた。でもそのCurtainもいつか開くはず。また自由に旅できる日が来るはず。引き出しの中のPassportもその日をきっと心待ちにしている。
Flyaway, 2020
Acrylic on canvas / 60 × 60 × 3cm
空に浮かぶBalloon。地球にも似たその球体は、楽しげな雰囲気を見せながらどこか危なげにも見える。その理由がわかるのは、絵を上下逆さまにしたとき。楽しげだったBalloonが、導火線のついた爆弾に姿を変える。僕らが暮らすこの星はいま、そんなギリギリのBalanceの上にあるのかもしれない……。
Carry The Day , 2020
Acrylic on canvas / 75 × 75 × 3cm
Ecologyの名のもとに、Life Styleが変化していく。でもそこに“真実”はあるのだろうか? Plastic? Nylon? Fabric? 大事なことは、それがどんな素材なのかではなく、そこになにを入れ、なにを考え、どんなふうに生きているかということ。
It’s So Hard, 2020
Acrylic on canvas / 130 × 97 × 3cm
COVID-19が、世界を変えた2020年。見えない敵の前にものものしい武器は、もはや意味をもたない。世界はどう変わるのか、だれにもその未来は予測できない。不安、混乱、怒り、悲しみ…… それでも世界は、希望の音楽を奏でる。John Lennonは、世界を思い“Imagine”を歌った。Shun Sudoは、世界を思いこの絵を描いた。“It’s So Hard”は、1971年に発売された“Imagine”のCoupling Song。あえてB面の曲名をTitleにした、画家の思いを感じてほしい。
BUTTON FLOWER_2020_01, 2020
Acrylic on wood / 80 × 75.2 × 5cm
世界地図を描いた一枚の生地があったとしよう。真ん中に描かれているのは大西洋。右にあるのはEuropa、左にあるのがAmericas。これが世界の標準だ。日本列島が描かれているのは、右端、まさにFar East。でもこの生地でJacketをつくったとしたら、背中が大西洋で日本は正面でButtonになる。はなればなれの2つの生地をひとつに留めるButton。それがあらわすのは、絆そして未来への希望。Shun Sudoが繰り返し描いてきたこの花のMotifには、そんな祈りにも似た彼の思いがこめられている。
New Normal Temperature, 2020
Acrylic on wood / 47 × 80 × 5cm
どんなColorも同じように美しく、同じように尊い。そこにあるべきは、憎しみや対立ではなく、LOVE & PEACE。アイスクリームのように溶け合えば、もっとSweetになるはず。その下に隠れたYellowのConeの存在も決して見逃してはならない。
Are You Ready?, 2020
Acrylic on canvas / 60 × 60 × 3cm
超大国の選挙に世界が注目した2020年。白いGlovesをつけた小粋なネズミと極東生まれの猫型Robotの関係にもなんらかの変化が訪れるのだろうか? 新しい年、新しい世界、新しい関係に向けて、“Are You Ready?”
Queensberry rules, 2020
Acrylic on wood / 80 × 38 × 5cm
MoralもRuleもないSNS上の罵り合い、殴り合い。ただStressをぶつけあうことをCommunicationとは呼ばない。誰かとつながるためのTechnologyが誰かを傷つけることになるなんてあまりにも悲しすぎる。そこにあるべきルールは、LOVEとRESPECT。それだけは決して忘れないでほしい。
And ?, 2020
Acrylic on canvas / 116.7 × 910 × 2.5cm
その4つのAlphabetがどれだけ僕らを励ましてくれただろう。物理的に離れていたとしても家族の、恋人の、友人の、仲間の、LOVEに力をもらった。でも次に向かうには、それだけでは足りない。しっかりと耐えた僕らは、いま未来に向かう。そのために必要なのはLOVEと、そして“?”。
歴史の勉強は好きではなかった。過去の出来事より、今や未来にしか興味を持てなかった。日本という国が特段好きだと思うこともなかった。自分が生まれ育った国よりも、海の向こうの見知らぬ国に憧れを感じ、長い時間をかけてあちらこちらを旅した。
ところが、旅をすればするほど日本の素晴らしさを感じ、歴史や伝統に思いをはせるようになった。もしかしたら、僕がなにげなく目にしていた景色や当たり前のように思っていた季節のうつろいは、日本ならではのもの、長い時間が作り上げてきたものなのだと、自由に旅ができるおとなになってようやく気がついた。
両足院の縁側から丁寧に手入れされた庭を眺めたとき、これこそが日本の美だと思った。雲が動くたび、風が吹くたび、表情が変わる。木々や岩や水は、何百年もの間、少しずつ形を変え、色を変えながら、この美しい景色を作り上げてきたのだ。目に見えるすべてが一瞬であり、同時に永遠に思えた。
畏れと誇りを感じながら、僕は作品づくりをはじめた。今まで絵を描きながら自分が日本人だと感じたことはない。むしろそんなナショナリズムと無縁の人間だと思ってきた。でも今回、絵と向き合うたびに自分のなかの日本人が目覚め、筆を走らせた。両足院の景色と歴史がそうさせてくれたような気がする。自分ひとりでは決してたどり着けないところに連れていかれ、自分ひとりでは描けない絵を描けた。この絵を通して、両足院に、京都に、そして僕を育ててくれた日本に、感謝の気持ちを伝えたい。
SHUN SUDO